――生まれてはじめて、何かも知れない。
こんなに悩んだのは。
碧眼のエルフは、そう思い苦笑した。
旅団へ遊びに行くのも疎かになってるな。
思い、申し訳なさにまた苦笑する。
此処、数週間が正念場。とても物騒な世界で、こんな事で悩める自分は幸せなのだろう。そう思う。いつも傍で色々とやらかしてくれる医術士の彼女は「戦いがあるなら、ちょっと考えたいことがあるのです」そう告げて、一人で何処かへ消えた。止めはしなかった。彼女の想いは直ぐに分かる。元々戦いの嫌いな子。楽しい事が何より好きで仲間の存在が支えの子。
平和が、長続きしすぎた。
だから。きっと、辛かったのだ。
寂しそうな彼女の顔が目に焼きついて離れない。
ぱふ、とリビングルームのソファに座る。いつもは、クラハシ姉妹や自分達姉妹の交流で賑やかなこの場所も、ワカバとリリアは買い物に行って、居ない。まぁ、クラハシ姉妹はこの家の住民なのではないのだが、騒がしいあの姉妹が居ないと、少し寂しい。
しかし、一人で考え事をするには、最適な時間だった。
――心が、壊れそうになった時も、あった。
そう想い、ふっ、と笑った。似合わないかな、と思っても自嘲の笑みしか沸いてこない。
でも。
ふと、口元に自嘲以外の笑顔が浮かんだ。
心の隙間は。
彼女が。
彼が。
あっさり埋めてくれた。
だから、きっともう少し、頑張れる。
そう、信じたい。
ソファにゆっくり横になって、目を閉じた。
遠くで響いた音が、微かに耳に入った。
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