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夢を見ていよう。何時か醒める其の時まで。 (TW3「エンドブレイカー!!」で活動しているキャラクターと、その後ろががやがやと活動するところです。 間違えてきてしまった方は、回れ右を推薦します)
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後ろのほうに居る人
性別:
非公開
職業:
学生やってます。
趣味:
読書とか。PCとか。ゲームとか←
自己紹介:
====================
 このブログのイラストは、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW1:無限のファンタジア』『TW3:
エンドブレイカー』用のイラストとして、背後が作成を依頼したものです。
 イラストの使用権は発注した背後に、著作権はイラストマスターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
=====================
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≪注意事項≫
・我が家の姉妹のSSです。
 妹の旦那様…もとい、婚約者さんのルーファスさんをお借りしまし、た。

・娘夫婦らぶな背後の愛が溢れていまs

 それでも宜しければ、どうぞ、ですっ





「では、私の妹を貰っていくつもりならば。色々試させて頂きますわ」
 そんな事を、満面の笑顔で言い出す姉を、鈴花は暫し、ぽかん、とした顔で見ていた。

 時間は暫し、遡る。
「あの……お姉ちゃん、そんなに気にする人じゃないですから……えーと」
「分かってる。けど、一応な」
 おろおろと声をかける鈴花の琥珀色の髪を、優しく撫でて、ルーファスが笑う。其れだけで、鈴花
はあぅ、と声をあげて赤くなり俯いてしまった。
 優しいお言葉を頂いて。
 婚約をした。
 それだけで胸がつまる程幸せで、正直他の事は忘れていたのだが――長い間鈴花のたった一人の家
族であり、保護者だった姉・若葉に挨拶をしなければ、というルーファスの言葉に我に返った。
 時間がある時、という事で今日にしたのだが。
 …なんとなく、嫌な予感がしていた。

 そして、的中した。

「妹さんを僕に下さい!!」
 そんな事を大真面目な顔で言い出したルーファスに、若葉は先ず「こんな時が来ると思っていた」
と嬉しそうにどうやらあるかないかいまいち分からなかった此の日の為に買ったのだろう、折り畳み
式の小さなちゃぶ台を押入れから取り出して、がっしゃーん、とひっくり返してみせた。
 そして、次の言葉は「試す」発言である。
 いや何いってんのお姉ちゃん楽しんでるよねそうだよね。
 自他共に認めるシスコンではあったが、其れ以上に姉の奇天烈な行為に思い悩んでいた鈴花は、心
からそう思った。そして実際、心から楽しそうな笑顔で若葉は更に続ける。
「我が家には先祖代々、婚約の際する儀式がありますの」
「…聞いた事ない…」
 思わず、ぼそり。
 いや、もし万が一あったとしても、生家に居た頃は見事なまでの引き篭もり生活を送っていた鈴花
が知る筈ないのだが。
 其れにしても、色々不都合だからまだ生家の苗字を名乗っているだけで、実際家名を捨てている鈴
花達姉妹は、仕来りに則る義務は最早ないのだ。
 絶対、今、適当に言っているに、決まっている。
 流石に十七年も妹をしていれば、色々分かる事が、あるのである。
 お遊びに決まっているから、断っていいのですよ――そんな意味合いの視線をルーファスに向けよ
うとした時、
「分かりました。幾らでも、お付き合いします」
 きりっとした顔で、ルーファス。
 の、乗らないでいいんです、よっ……?
 そんな事を思っておろおろしていると、ルーファスは更に続ける。
「若葉さんになら、幾らでも付き合う!!」
 ぴしっ。
 其の一言で鈴花は一瞬固まる。そして再び身体が動き出した時には、
「ふぃたっ……」
 思い切り、ルーファスの頬を引っ張り、抓っていた。
「あらあら」
 若葉は、其れを見て楽しそうにころころと笑う。
「仲良しねぇ」
「……ルーファスが他の子にちょっかい出さなかったら、ね」
「あらあら。此の子ったら、焼餅妬きで、御免なさいね?」
「いや、そういうところも可愛くて好きだ」
「~~~っ……ル、ルーファスっ」
「あらあらまぁまぁv」
「~っ…し、知らないっ」
「あらあらv」
 散々、楽しげに笑った後、さ、と若葉が更に楽しそうに両手を合わせた。
「ではそろそろ、試験と参りましょうv」
「…ぇ、本気でするの?」
「勿論よ?」
 けろっとした顔で若葉は其れだけいうと、再度押し入れの方へと行き、何かごそごそ探し出す。
「んー……ぁ、あった、あったわ」
 そして、楽しげな笑顔で両手に抱いたものを、ちゃぶ台(ひっくり返せないくらい大きい方)の上に
乗せた。
 其れを見て、鈴花は小首を傾げる。
「…着物…だよね」
 そう、其れは着物だった。
 花柄の、蒼基準の女物の着物。割とシンプルなデザインで、綺麗な着物だった。
 あれ?、と鈴花は小首を傾げた。
 姉は、いつも藍色基準の着物を着たがる。其れも、羽柄のほうが好きだ。花柄は先ず着ない。
 妹の鈴花には良く、桜模様の着物を渡してくるが、其れももっとふりふりでひらひら。其れもフリ
ルがいっぱいの如何にも少女趣味のものだ。ついでに、大体はピンクか白。何にせよ、此の着物は姉
の趣味にはあってなかった。
 しきりに小首を傾げている鈴花にはお構いなしに、若葉は続ける。
「というわけで、此れ着てみてくださいなv」
「!?」
 何がというわけなのさっぱり分からないよおねえちゃんいや私も良く女装は勧めるけど!!
 心の中で怒涛のツッコミをしながら、ぱっと顔を上げた。姉は、やはり笑顔だった。
 姉も妹も、綺麗な男性や可愛い男性を見ると、女物の服を渡すあたり、姉妹だと思われる。
「ね、絶対似合うと思うの。美人さんですし……ぁ、お化粧道具もありますわよ?」
 そう言いながら、今度は化粧道具一式が入った箱を差し出してきた。
 そして、さぁ、どうぞ、と言わんばかりに瞳をきらきらさせる。
 鈴花が(自分のことは棚上げて)ちょっと呆れていると、ルーファスは隣で其の着物を手に取った。
「分かりました、お義姉さん」
 きりっとした表情のルーファスを見て、わたわたと鈴花が視線を向ける。
「ぇ、と…い、いいのでしょうか?そりゃ、見てみたいですが……」
「鈴のお姉さんの頼みとあっちゃ、断れないだろ」
 からからと笑うと、ルーファスは着物を手に立ち上がり、化粧道具が入った箱も手にする。
「ふふ、そう言ってくださると思っておりましたわv」
 若葉が、嬉しそうに胸元の前で両手を合わせた。
「どうぞ、あちらの部屋へ。其処で、お着替え下さいな。楽しみにしておりますわ――…ぁ、お手伝
いはいるかしら?」
「いや、大丈夫だ」
「分かりましたわ。それではv」
 着物と、化粧道具を持ったルーファスが、隣の部屋へと歩みゆく。
 そして、ぴしゃん、と小さく襖が閉まった後、若葉は妹の方を見た。
「あらあら……そんな不機嫌そうな顔をしていると、折角の美少女が台無しよ?」
「別に不機嫌じゃ――ってび、び、美少女ってっ……もう、お姉ちゃんったら!!」
 顔を真赤にして、頬に手をあてる。そんな妹を、くすくすと楽しげに若葉は見ていた。
「……貴女が選んだ男性だもの。貴女を信じているから、彼はいい人……其れは、勿論分かっている
わ」
 鈴花は、はっと手を頬から離し、姉の方を見る。若葉は、妹を眼を細めて見つめ、微笑んでいた。
「でも、ほら。結婚するって事は、相手の家族とも家族となる、という事じゃない?だから、私の…
同い年だけど弟になるわけだから、面白い人がいいなぁって思ったのよ」
 くす、と若葉は楽しげに口元に手をやった。
「……これだけじゃ、終わらないでしょ?」
「勿論。まだまだ考えているわ。ロシアンルーレット饅頭とかv」
「……悪戯好きだなぁ」
 呆れて、でもそんな姉が好きだから、鈴花は苦笑をした。
 若葉はそんな妹を見て、更にくすくすと笑っていたが、ふと、顔をあげる。
「あら……出来上がりましたの?」
「んー…まぁ、何とか」
 襖越しに、ルーファスのくぐもった声が返ってくる。そういえば、衣擦れが聞こえなくなってい
た。着衣は終わっていたらしい。
「……む、ぅ」
 鈴花は、自分ではなく若葉が其の事に気づいた事に対して、頬を膨らませる。
 姉には適わない。分かっているけれど……どんな些細なことでも、ルーファスの事を気づくのは、
私が…いいなぁ…。
「ぁっ、」
 其処まで考えて、急に恥ずかしくなって。
 思わず小さく声に出していた。其れも、恥ずかしい。
 真赤になって俯いた鈴花に気付いていないのか、其れとも気付かぬふりをしてくれているのか、若
葉は楽しげに襖越しにルーファスに話しかけていた。
「じゃあ、開けていい?」
「おぅ。驚くくらい美人だぞー」
 そんないつもの彼の軽口に鈴花はくすっと笑って顔を上げた。
 丁度、其の時に、若葉によって襖が大きく開かれた。
「…ふぁ…」
 ルーファスの女装姿を見たのは此れが初めてでは無い…が…それにしても。
「綺麗…」
 何度見ても、ため息が出る程に、彼はやっぱり綺麗だった。
 姉が渡した化粧道具の中に入っていたのだろう、着物と彼の髪色に合う紫の石をはめ込んだ簪で丁
寧に髪を結いあげている。きちんと着物を纏った身体は、どうやったのだろうか?本当に女性と紛う
程に丸みを帯び、胸の部分もきちんと工夫していた。顔も軽く化粧しており、本当にため息が出る程
に美人だった。
「……此れは、想像以上、ね」
 若葉が、楽しそうに口に手を当て、微笑む。
「凄く美人さんだわ」
「……悔しいくらいにね」
「あらあら、ふふv」
 少し不機嫌にそう呟いた鈴花に、若葉は、貴女も可愛いわよ、と言った後に妹の反応を待たずに、
ルーファスに向かって微笑むかける。
「これなら、男の子が産まれても女の子が産まれても、美人さんになるわね。ねぇ?」
「ぇ、ちょ、ちょっと待って、お姉ちゃん!!何のこと!!??」
 姉の「可愛い」発言で真赤になりあたふたしていた鈴花は、然し、其の発言でばっと姉の方へと向
く。ルーファスに発言の機会を与えないすばやさだった。
「何のこと、って……だって、婚約したのなら、当然其の内そういう話も――」
「う、ううっ……何のことだか、何のことだかーーーっ」
 真赤になり、首をぶんぶん振る鈴花に、ルーファスが近寄り、膝をつくと、そっと彼女を抱きしめ
た。
「子どもが産まれようと、鈴が一番大事だぞ?」
「なっ…うれし…じゃなくてっ。別にそんな嫉妬心からじゃあ、なくってーーーっ」
 首を更に激しくぶんぶん振る。
 姉の前でもけろっとした顔で自分を抱きしめるルーファスにもぅとか何とか思いながらも、何だか
んだ抵抗しないのは嬉しいからなのだが、其れにしても、姉はずっと肩を寄せ合って二人で生きてき
た妹が目の前でこう、…所謂いちゃつきをするのは何とも思わないのだろうかと思って見てるとあら
あらうふふvと満面の笑顔を浮かべているしで、恥ずかしさ倍増。自分でも何を考えているのか分か
らなくなる始末。其れも、今女装をしているルーファスは本物の女性と見紛う程で――いや、其れは
いいのだけれど、と更に思考が混乱し始めた其の時、
「ルーファス様の素敵なお姿、拝見出来て嬉しかったですわv我侭、お許し下さいね。でも嬉しいわ、
未来の甥っ子か姪っ子の想像も出来たしv」
「~~っ、お姉ちゃんっ」
「ふふ。では、お着替え下さいな。化粧落としとかも、あの箱に入っていましたので……」
「分かりました、お姉さん。じゃあ、鈴。また後で」
 ちゅっと、軽く頬に口付けをすると、ルーファスは鈴花から離れ、先程の部屋へと消える。
 鈴花は、其の間も口付けられた頬をあうあうあうと摩っていた。微妙についていた口紅が手に移る。
 其れを、世にも面白いものだ、という風に見ていた若葉は、ふと、何かを思い出したように立ち上
がった。
「は、れ…?お姉ちゃん、どうしたの?」
 鈴花は、其れに気付き、少し落ち着きを取り戻した声で、訊ねた。
 ん?、と若葉は妹に笑顔で振り返る。
「次の試練の準備v」
「…嗚呼、そう…ってっ、ええ、まだするの!?」
「するわよ?」
「ま、まさかさっき言ってたロシアンルーレット!?そりゃ、私もよくするけどっ……でもほら、今
日はちゃんとした挨拶で――っ」
「ふふ、どうかしらね。じゃあ、ちょっと席外すわね~」
 妹のわたわたとした抗議を一切無視して、若葉は笑顔のまま、鈴花に背を向けて、障子へと向か
う。ちょっとお姉ちゃん、と伸ばした手も空しく、若葉はとっとと部屋から出て行き、障子を音もな
く閉める。其の後に続く足音も、直ぐに聞こえなくなった。
「着替えたぞ――……どうした、鈴?」
 後ろの障子ががらがらと開いて、ルーファスがひょい、と顔を見せた。鈴花はというと、姉を制止
しようとしたポーズのまま、固まっていた。そんな鈴花に、ルーファスは後ろから抱きつき、鈴花は
はっとして真赤になり、ようやく手を降ろした。
「いえ、何でも……」
 ごにょごにょと其の場にごまかした後、一番大切な人の腕に抱かれている事に、暫し、ぼぅ、とし
てしまう。が、此れだけは言わねば、と思い、恐る恐る、ルーファスの方を見た。振り返って見た顔
は、化粧を落としても尚、整った、綺麗な顔立ちだった。いつも見ているが、見惚れそうになる。…
勿論、其処だけで好きになったわけではないが。
 いけない、と慌てて鈴花は首を振る。今はそんな事ではない。
「あ、あの……御免なさい、破天荒な姉で……。む、昔からそうで……」
 言い訳がましく、もにょもにょと謝る。
「でも、えと……あの、良い姉ですし、第一、あの」
 其処まで言って、そっと眼を伏せる。
 姉がああいう風に破天荒な性格になったのは自分の所為だった。勿論、そんな姉が嫌いなわけでは
無かったが……貴族のお嬢様としての時の彼女は、もっとそれに相応しい振る舞いをしていた。自分
の所為で両親からも親族からも離れて、…忌み嫌われる自分を護る為に、大人の世界に入ろうとして。
結果、あの性格になったのだ。
 そんな姉の事は慕っているし、感謝している。大切に思っている。けれど……其れより大切な人が
出来たからこそ、そんな彼に、姉の事を、嫌われてほしく、無くて。
 そんな色々な想いが駆け巡る心を、知ってか知らずか。ふと、ルーファスが優しく、鈴花の髪を撫
でてくれた。
「はぅ……」
「俺は全然変だと思わないけどな。美人さんだし」
「………」
 きっと睨むと、ルーファスは悪びれず、はっはっ、と笑い飛ばした。そんなルーファスから眼をそ
らし、拗ねていると、また抱きしめてくれる。
 …それだけで、機嫌が直る。
 やっぱり、単純だなぁ、私…。
 そんな事を思いながら、振り返ろうとしたとき、
「お待たせしましたわ――…ってあらあらv仲良しさんv」
「きゃ!!??」
  正面から聞こえた姉の声にそのまま固まった。
「お、若葉さん、お帰りなさい」
「只今vふふ、お邪魔だったかしら?」
「いや、大丈夫だ。特に人前でも――」
「二人共っ」
 鈴花が真赤なまま、大声を出す。ルーファスは肩を竦めると鈴花から離れ、若葉もくすくすと笑い
ながら、机と何か置いた。
 其処で、鈴花は若葉が何を持ってきたか分かった。コップが二つと……清酒の一升瓶。ロシアンで
は、無いらしい。其れと、急須と鈴花が此の家に居た時に良く使っていた、桜模様の茶碗。
「えーと、」
 鈴花がわたわたと小首を傾げる。そんな妹を見つめ、若葉はくす、と笑うと一升瓶を開けて、二つ
のコップに並々と注いだ。茶碗には、良い香りの緑茶を注いで。
 お酒の入ったコップをルーファスに、茶碗を鈴花に渡すと、若葉自身もコップを手に取り、其れを
少し、掲げた。
「……妹の、新しい門出に、ね」
 そして、微笑む。
 鈴花は、はっとしてわたわたとルーファスの方を見る。はずかしながら、何をするのか良く分かっ
ていなかった鈴花とは違い、ルーファスは微笑みながら、「ありがとうございます」と杯を掲げてい
た。其れに習い、鈴花も慌てて茶碗を掲げる。
「乾杯」
 若葉の柔らかい声に続いて、硝子と投機が合わさり、響く音。其の後、若葉とルーファスはお酒を
ぐっと飲み干す。一気飲み良くない…と思いながら、鈴花はとめもせず、両手で茶碗を持ったまま、
二人を見守っていた。が、ふと思いつき、慌てて立ち上がる。
「まだ飲むなら、おつまみ、作ってくるっ」
 そういい残すと、わたわたと台所へと向かった。


 若葉は、ルーファスのコップに更に酒を注ぐ。ルーファスはどうも、と言って其れを受け取って、
飲み干した。
「ふふ、良い飲みっぷりv一緒に飲める人じゃなかったらどうしようかと思ったわ。…まぁ、あの子
と同棲する時点で一緒に飲みましたが」
 そう呟きながら、自分も杯を傾ける。
 そして、妹が消えていった方を、しっかりとした目線で、見て、微笑んだ。
「……あの子は、とっても寂しがり屋で、甘えたがりで、…弱いの」
 唐突に語りだした、婚約者の姉を、実質的には母の役割を兼ねていた女性を、ルーファスはじっと
見つめた。
「ずっと、自分の殻に閉じこもっていて……私と二人で生きてきたわ。だから…貴方のような人が出
来た事…心より、嬉しく思います。少しだけ、寂しいけれど。…あの日誓った、私の役目は、此れで
終えられるわ」
 若葉は、そっと視線を、ルーファスの方へと向きなおす。
 そして、姿勢を正すと、そっと、畳に両手をついて。綺麗に、お辞儀をした。
「…あの子を宜しくお願いします」
「……」
 ルーファスも、杯をちゃぶ台に置くと、彼女と同じよう、畳に両手をついて、お辞儀を返した。
「必ず、幸せにします」
 しっかりとした言葉。
 …若葉の肩が、微かに震えた。
 其れに、気付いた人間は居るのだろうか――…分からないまま、彼女は顔を上げると、微笑んだ。
「ふふ、頼りになること」
「おぅ、任せとけ」
 顔を上げ、ルーファスも笑う。そんな彼に微笑むかけたまま、若葉は自分の杯に残っていたお酒を
ぐいっと飲み干すとルーファスの杯と、自分の杯を、再度満たす。
 台所から、じゅーじゅーという音と、肉が焦げる良い香りが聞こえてきた。どうやら、鈴花お手製
のおつまみも、そろそろ来るようだ。
 其の前に、と若葉は微笑んで、杯を高く掲げた。
「――貴方達の未来と、幸せに」
 ありがとうございます、と掲げたルーファスの杯。
 かつん、と妹と、新しく家族になるであろう男性の幸せを祈った音が響いた。


≪終わり≫

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