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指で弾けば、音が響く。
優しい唄。
…唄に呪いは必要無い。
唄は誰かの優しさで出来ているのだから。
…でも。
長い黒髪で顔が見えない。
泣くわけにはいかない。
…でも…。
ぽろん。
指で弾くと、音がする。
時には敵を倒し、誰かを護る為の音。
時には奏で、誰かを喜ばせる為の音。
…今は…。
「私は…」
唇から声が漏れる。
殆ど、無意識に。
「…有頂天になっていただけ、なのね…」
たくさんの、色んな事に対して。
詩を奏でようとした。
開いた口から零れ落ちたのは、震える声で。
「――嗚呼、」
目をぎゅっと閉じて、空を仰ぐ。
紺碧の空。
私達と同じ目の色。
…其れだけ。
其れよりも感じたのは。
何年ぶりだろうか、という気持ち。
つぅ、と彼女の頬に伝った雫が。
膝の上に堕ちて。
…そして其れさえなかったのように、微笑んで。
詩を、奏でた。