――本当に、頭が痛くなる。
エリザベスは、そう思い溜息をついた。
「何してますかー?置いていきますですよ?」
「・・・・・・。いっその事、置いてけ」
「ぁぅっ」
エリザベスの一歩先を歩いていた少女――スズカは、その言葉を聞くと涙目でこちらを見た。
「酷いのです」
「五月蝿い。朝からこんな所をずーっとつれまわして・・・・」
ドラゴンゲート「黄金巡礼回路」。
とある休日に、スズカが
「一人じゃ心細いからベスも一緒に行くですよ!!」
・・・と、無理矢理連行していった。
そんなわけで。エリザベスは不機嫌だった。
このスズカとは接点が多い所為か、気は合うのだがどうも互いに遠慮がない。
「というか、キミは一人でも全然平気だろ・・・・・。前衛たっても大丈夫なくらい体力あるし・・・・」
「体力は前衛並ですから★」
「じゃあ何でボクを連れて行った」
「気分」
「・・・・・・」
スズカは本気で呆れているエリザベスを見ると、あはは、と笑う。
「嘘ですよ。頼りになるからです」
「よく言うよ・・・」
スズカはもう一度笑った。
「まぁ、お互い運動不足解消って事で」
「不足してるつもりはないんだけどね?」
「いつも人を蹴ったりしてるから?」
「・・・失敬な」
微かに繭をひそめたエリザベスを見て、スズカはまた笑った。
「まぁ、御気になさらずに。それに、召還獣のえさがなくって困ってるでしょー?」
「・・・・否定はしないけど・・・」
「じゃあ、いいじゃないですかーv」
ねー、と明るく笑うスズカを見ていると、反論するのもばかばかしくなってくる。溜息を一つつくと、彼女に言う。
「・・・で?何で一度来た事あるのに迷ってるわけ?」
「・・・それをつっこまないのがお約束なのですよ」
「・・・わけわかんない」
そんなわけで。
二人は今悩んでいた。謎解きに。
元々このドラゴンゲードは複雑な所が多いが、「一度きたら大体憶えられる」というのも本当だった。
なのに――この目の前の藪医術士はすっかり忘れていた。
うーん、と悩みながらボタンを踏んで違ったりして慌てたり。そして、時折出てくる敵を特に苦もなく倒したり、の繰り返し。
「休憩なのですっ」
スズカは適当に座り込みながら言う。エリザベスも無言でその隣に座った。
「・・・・ふぅ。早く帰りたいんだけどな?」
「五月蝿いのですー。アイテムの為に頑張りなさいなのですっ」
むぅ、とスズカは拗ねた。子どもか、と笑いながら姉を思った。
(・・・姉様・・・まさかとは思うけど・・買い物とかしてませんよね・・・?)
姉は、お人よしだ。市場でぼったくり値段の物を掴まされたって文句は言わない。だから、姉を長時間一人にするのは不安なのだ。
ふぅ、と溜息をつきながら隣で座っている少女を見た。
同じ茶でも皆から「お日様の色」といわれているふわふわの髪。紫の目に、自分よりやや低い身長。その一つ一つが大人びているようで、幼いようで、自分と本当に同い年なのか、と少し笑った。
その笑い声をスズカが少し驚いたような表情をしてみていた。しかし、直ぐにそれも笑顔に変わる。
「何?」
「楽しそうだなーって」
嬉しそうに彼女は言った。
笑顔を嬉しそうに見られたのが、少し照れ臭くて、そう、と答えるとエリザベスは立ち上がった。
「そろそろ行こうか?」
「ですね」
スズカも立ち上がり、にぱー、と微笑む。
「・・ところで、解けそう?」
「それは聞かないお約束なのです」
「・・・もぅ」
とある休日の一場面
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