「スズ?何処へ行くの?」
背中に聞こえた姉の声。
振り向いて、微笑んだ。
「憶えておこうと思うの。散ってしまう前に」
もう桜の季節は終わりを告げる。
桜の花は、あっさりと――散る。
枯れるのではなく、散る。
ぼんやりとしながら、天啓を受けた日を思い出していた。
私にはお姉ちゃんが居る。
余計な干渉はよしてよ。
わかってくれないの?
中途半端に、
・・・愛されるほうが、辛いんだよ?
どれだけ流れる血を恨んだ事か。
私が要らないのなら、最初から殺してしまえばいい。
想い出も何もない、生まれたときに。
そんな、中途半端な愛情。
あの日も、ずっとそう思っていた。
けど、
桜は、綺麗に散っていた。
少しだけ、淡い色の中に緑が目立つ。
微笑んで、手をかざした。
「堕ちていくのが、哀しくないの?」
答えない。
「・・・其れとも、何かを夢見るのかしら。あなた達は」
こたえない。
「――・・・・・」
其れで、良かった。
此の痛みは此の胸に。
ごめんなさい、と小さく呟いた。
私の所為で傷つけた人へ。
・・・其れでも、私に愛情をくれる貴方へ。
「私が、傍にいたいだけ」
枯れるのではない。
確かに散る逝く定めだけれども。
・・・・きっと、また、出逢えるよ。
涙が出てきた。
其れでも笑った。
笑っていた。
・・・・笑顔を、一つ。
まるで、欠片を集めるように。
拾い上げるように。
御願い、
PR