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夢を見ていよう。何時か醒める其の時まで。 (TW3「エンドブレイカー!!」で活動しているキャラクターと、その後ろががやがやと活動するところです。 間違えてきてしまった方は、回れ右を推薦します)
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学生やってます。
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読書とか。PCとか。ゲームとか←
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 このブログのイラストは、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW1:無限のファンタジア』『TW3:
エンドブレイカー』用のイラストとして、背後が作成を依頼したものです。
 イラストの使用権は発注した背後に、著作権はイラストマスターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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 覚えている、といったら嘘になる。
 だって、本当に興味がなかった。
 興味が無かったから、本当にどうでも良かった。
 翳された刃が綺麗だったから。
 嗚呼、別に良いかな、って。

 ・・・そう、思えた。






 布団の中で目を覚ますと、まだまだ辺りは暗かった。
 春先とはいえ、まだまだ寒い。そんな時期。
 私はぼんやりと布団の中から障子を、其の向こうの廊下を見、そして小首を傾げる。
(・・・おと?)
 誰かが、廊下を駆ける音。
 一人では無い。幾人かの足音。其れも、子どもでは絶対無い。大人のものだ。
 今は真夜中。足音の大きさからしてみても、姉ではない。
 女中さんかな、とも思ったが、有り得ない。
 私の所に、来る筈が無い。誰も。
 然し、其の足音は明らかに私の元へと向かっていた。
 荒々しい、大きな足音。此の部屋から殆ど外に出る事はなかった、私からしてみれば初めての音だった。

 やがて、其の足音は部屋の前で止まった。

 月明かりに照らされ、障子に映った人影。
 やはり、大人の男だった。其れも、三人程は居る。
 布団から身を起こし、じっと其の影を見つめる目の前で、障子が音を立てて、開かれた。
 大きな音を立てて、開いた障子。
 其の向こうに立っていた、伯父を見て――

 嗚呼、遂に此の時が来たのか。

 そう、ひどく他人事のように思えた。
 伯父達の肩越しに見える中庭の桜の木が、夜の闇に仄かに浮かび、綺麗だった。


 不思議でならなかった。
 何故、私が生かされていたのか。
 何故、直ぐに殺さなかったのか。
 ・・・違う。
 不思議でもなんでもなかった。
 私は本当に、消えたかった。

 幼すぎたのかもしれない。
 私は、死が持つ恐怖を理解していなかった。
 唯、邪魔に思われているのは知っていたから。
 皆が言うように、私が不幸を運ぶのなら。
 私を愛してくれる姉に其の不幸を運ぶ前に逝きたかった。
 私の死に、涙してくれる人が居る前に逝きたかった。
 どうしようもない、我侭だった。


 伯父・・・父の兄が持っていたのは、一振りの刀。
 後ろの桜や、月景色に相まって――・・・とても、綺麗だった。
「やはり、産ませるんではなかった・・・・」
 伯父の絞るような声だけが、耳に聞こえた。
 後は、聞いていなかった。
 只、目に映る風景があまりに綺麗だったから。
 私を殺す為に持ってきたであろう刀が、銀色に輝いているから。
 あれに殺されるのなら、別に良いかな、とも思っていた。

 伯父が何か言っている。
 其れは目に映ったが、現実感がなかった。まるで、絵を見ているようだった。
 そんな伯父をぼんやりと見上げながら、ふと。
 夢のような一瞬が、目の前を過ぎった。

 夜ではない。
 昼だ。
 良く晴れた日。暖かい日。
 今より少しだけ、幼い姉と――・・・
 琥珀色の髪を靡かせる。
 あれは、・・・

 ・・・あれは、誰だっただろう?

 思い出せなかった。

 不意に、刃が振り上げられた。
 どうやら、言いたい事は言ったらしい。
 私は考えるのを止めた。
 今考えても、何になるんだろう。
 どうせ、私は。

(あ、でも――・・・)

 ふと、思った。

(おねえちゃん・・・)
 脈絡の無い言葉だった。
 でも、私の脳裏にははっきりと姉が浮かんでいた。

 風が吹き、ふわり、と桜が舞う。
 そして――


「やめてぇええぇえええぇええ!!!!!」


 ――泣き声に、よく似た叫び声がした。


 どん!!、と勢いよく伯父に何かがぶつかった。
 ふわり、と伸びた夜の闇に似た――でも、ひどく優しい髪の色が揺れた。
「あ、」
 小さく呟いた時、
「――っ・・・!!」
 姉が、私を抱きしめていた。
「わ、若葉ちゃん・・・・」
 伯父の後ろに控えていた、父の弟・・・だったと思う。とにかく、叔父が戸惑ったような声を上げた。
「どうして――・・・」
「其れは、此方の台詞です」
 姉は、すっくと立ち上がった。
 私を庇うかのように。
 立ちはだかった背中が、少し震えていた。
「妹に、何をするのですか」
「若葉ちゃん、」
 姉の体当たりを食らって、尻餅をついていた伯父がよろよろと立ち上がる。
「君にはまだ、分からないだろうけれど――・・・取り除くべきなんだよ、其の子は、」
「私の妹です」
 姉が、きっぱりと言った。
 迷いすら、無く。
「殺すのなら、私を殺して下さい。最後の最期まで抵抗してやります」
「若葉ちゃん、馬鹿な事はっ」
「馬鹿はどちらですか?・・・貴方達でしょう。
 意味も実態もないものに振り回されて。此の子を理由もなく嫌って・・・殺そうとさえ、している。貴方達は、此の子をちゃんと見た事が、あるのですか?・・・・無いでしょう?」
 そして、ふと姉が、笑い声を立てた。
 短く、乾いた笑い声。嘲りを含んだ其の声は、今まで聞いた事が無い、冷たい声だった。
「そんなだから、御父様とお母様を取り逃すのですよ」
「――・・・なっ?」
 場の雰囲気が変わった。
 急に、焦った風になった伯父達を見て、姉は更に笑う。そして、すっと手をあげて、人差し指で向こう側を指差した。
「此の子を貴方達に渡したのは時間稼ぎです。・・・ほら、早くしないと。御父様達、もう都市国家から逃げ遂せてるかもしれませんよ?」
 ざわめきが走る。
 そして、次の瞬間には、三人の男達は、踵を返して走り去っていった。
 私は其れを、唖然と見つめていた。・・・話が、見えなかった。
「お、おねえちゃん――・・・?」
 唯、一つ。分かった事があったから。
 だから、訊ねた。
「どうして、わたしをたすけたの?わたしは――」
「・・・・馬鹿」
 ふわ、と。
 温もりに、包まれた。
 何時も感じている筈なのに、何時も懐かしく感じてしまう――不思議な、姉の体温。
 お姉ちゃんは私を抱き締め、私の肩に顔を埋めていた。表情は、見えない。分からない。
「死んだら、駄目よ」
 小さく、其れだけ言うと。
 姉の身体が小刻みに震えた。

 嗚咽が、抑えきれない哀しい涙が、
 伝って、響くのを感じた。
 静かな夜だったから。
 綺麗な夜だったから。
 其れが、綺麗で――・・・其れでも、現実感は、しっかりとあって。
 哀しかった。

 そして、其れが。
 私が見た、姉の最後の涙だった。
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