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●紅い山で
少しずつ、少しずつ。時折、急激に、涼しくなっていく。
季節の変わりを感じるのは、気温だけではなく、風景も。
葉が、色づいて行った。
「荷物が重い・・・潰れる~」
がくっ、と大荷物を抱えた木陰の射手・ユウ(a76020)が座り込む。
山まではもう少し、だけれど荷物に重さには耐え兼ねない。
「はう、だいじょぶですか?」
慌てて桜蘭花・スズカ(a62807)が助けようとするが、彼女も彼女で大荷物を抱えていて、手がふさがっている。
皆であわあわ、と慌てていると、
「お弁当重いから俺が持つよ・・・力持ちだからね・・・」
と、静かな声が、微笑と共にした。紅に染まる彼岸花・ゲッカ(a68104)は、スズカが持っていた弁当と、ユウの持ってきた弁当を持つ。
二人はそれぞれに礼を言った。
ゲッカは、紳士的に荷物を運んでくれる。
しばらく歩くと、山が見える。
ただ、それは数ヶ月前とは、まるで違って、紅くて、夕日に照らされているようだった。
「わぁ、お山が真っ赤だぁ。綺麗だべな♪」
思わず感嘆の声をあげたのは、ヒトの医術士・ジニー(a75210)。標準語を忘れているのに気付かず、ただその風景に感動していた。
その、紅い景色は、故郷で見慣れていた光景。――けれど、より一層綺麗に見えて。
「スズカさん、素敵なお誘いありがとです♪」
「はう、楽しんでくれたら、嬉しいのです」
はわわ、とスズカがあわてた。
水鏡の奏唱姫・オフェリア(a72761)もスズカに感謝の意を述べ、スズカは更にあわてる。
貫き通す意志・リタ(a73451)も、山の美しさに目を細める。
やがて、一行はその山に、足を踏み入れた。
●お弁当広げて
しばらく歩き、弁当を広げるのに、ちょうどいい場所を見つけた。
其処に落ち着き、ゲッカが、ユウと自分が持ってきた敷物を広げる。
そして、ゲッカはその後、その敷物が見える位置にハンモックを準備した。場所は、椅子が座ってるくらいになる、あまり高くない位置。
「風が少し寒いね、まぁいいか、寝る訳でもないし・・・」
そして、五人くらいなら座れるから、と皆を誘った。
それを聞き、自由にハンモックや、敷物にそれぞれ腰掛け、お弁当を広げる。
「まずは、私のお弁当です~♪」
スズカが広げた弁当には、煮物などという楓華風の弁当。にぱー、となんとも緊張感のない笑顔を見せながら、ゲッカさんも手伝ってくれましたーv、という。
「みんなージュース持ってきたよー。ゲッカさんはワインの方がいい?」
ユウも、持ってきた飲み物を皆に配る。梨ジュースの甘いにおいが漂う。
オフェリアも、クラブハウスサンドイッチ、鶏の唐揚げ、だし巻き卵・・・などを広げる。また、飲み物にココナッツジュースやハイビスカスティーなども広げた。
「さあさあ、食べ物飲み物は大量に持ってきたのじゃ。遠慮せずに存分に味わってくれ」
満面の笑顔で、オフェリアが言う。
合掌して、皆で弁当をつつき合う。
そんな中、ユウも自分の弁当を広げてみる。ついでに、中身はまだ何か知らない。
中。何か緑。
よく見る。足が何本もある生き物。
「・・・・・」
ユウは固まった。
そう、その弁当の中身は――バッタの素揚げだったのだ。じゃーん(←効果音)。
そして、弁当を閉める。
「ごめん、スズカさん…やっぱり僕も弁当もらっていい?」
「はう~、勿論ですよーv」
礼を返しながら、ユウは弁当をこっそり隠す。
順調に弁当の中身が減っていく。
ジニーは、そんな楽しい時間をすごし、思う。
縁あって桜舞で出会った素敵な暖かな仲間たち。
そんな仲間たちと共に紅葉狩りを楽しむ。そして、その中にいる自分。
「本当、いつまでもこうしていられたらいいだべな」
思わず、小さく呟いた願い。
「はう~?」
スズカが首をかしげるのを、何でもないです、と少しあわてて返した。
そして、自分の荷物をごそごそ探る。
「実はおやつ作ってきたんですよ。じゃ~ん、栗きんとん~♪」
少し、ずれているかも知れないが、それはおいといて。
程よい甘さの栗きんとんに皆頬を緩ませる。
ふと、オフェリアが提案する。皆で歌を歌おうと。
皆が盛り上がれるよう、と準備した曲。オフェリアから習い、全員で歌う。
「色づ~く~木々の葉~~深ま~る~秋の日~♪豊かな~実り~に~~心が~
弾む~~♪」
それぞれ違う声で歌う歌。山に響いて、風に流される。
やがて、歌い終わり、皆満足げに微笑む。
いい歌でした、とスズカが感想を漏らした。
また、しばらくしてリタが口を開いた。
「さてと、一緒に紅葉狩りに来たわけだけど、みんなとしばらく色づく山々を眺めながら故郷の話を少だけしてみようかしらね」
そういうと、話し始める。
代々狩人の彼女の実家の事。
故郷のほうにある山の谷――そして、それも秋になると色づいて綺麗な事。
リタの家が所有する領内を巡回しながら色々な草花を愛でたり秋の実りを採ってそれを夕食にしたりした日々の事。
ふと、リタが立ち上がった。
「ちょっと待ってて、その辺ぐるっと回ってくるわ」
そういって、山の中へ入っていった。
●それぞれの
弁当を片付けた後。
ユウは、紅葉を見つめながらうとうととしていた。
オフェリア、ジニー、スズカは談笑をする。
ゲッカは、立ち上がり葉っぱを捜す。
そうして、気に入った葉っぱを二、三枚拾うと微笑んだ。
栞にしよう、とゲッカは微笑んだ。
一方、先程山に入ったリタは笑顔で帰ってきた。
「これ、持って帰ってみんなで食べよう♪」
そういって袋を差しだして見せる。
中には栗や松茸など、秋の味覚が入っており、皆わぁ、と感嘆をあげる。
「・・そういえば、ユウさんのお弁当には何が入っていたのでしょう」
スズカのその言葉にユウがあわてて反応した。
とめようと思ったが、既に遅し。スズカは弁当箱の蓋を開いた。
そして。
固まった。
しばらく時間が過ぎ、そしてその弁当は再度封印されたのであった。
●紅葉色の帰り道
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気がつけば空が紅く染まっていく。
紅い葉は一層紅くまだ染まっていない葉は空の紅で染まっていく。
「そろそろ帰りましょうか~」
スズカがいい、皆が賛成をした。
「今日はお疲れ様でした。とても楽しかったです♪」
ジニーの、最高の笑顔を見て、皆もそれぞれに笑顔を浮かべる。
そのとき、ユウが【偉大なる羊の召喚】をした。其の為、皆あくびをしてしまい、それで更に笑ってしまう。
紅色に染まる空と、葉を見て。
帰り道を辿る。