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ふわり、
舞うと、季節外れの桜花が舞う。
人気の無い其の場で。
咲き乱れる花も無く。
茂る樹も無く。
唯、桜花だけが、舞う。
舞う――
桜の花は好き。
だから、何時でもこうして呼び寄せられる術を使えるようになった時は、本当に嬉しかった。
初夏の兆しが見えてきた空に、桜が舞い上がり、そして舞い落ちる。
其れを見届けながら、舞い続けようとして、
「きゃっ…」
後ろに、転んでしまった。
「…はぅ…」
とっさに手をついたから、尻餅をついただけで済んだが、私はどうして何時も、と思って苦笑した。
それでも、立ち上がり。
友達から貰った、扇で。
舞い続けた。
髪が、一房。
淡い色合いのリボンが編みこまれている其の髪が、共に揺れる。
舞いは、好きだった。
人に見せるようなものでは無いから、戦闘以外ではあまり踊らないのだけれど。
其れでも、好きだった。
目を閉じて。
舞い落ちる、桜を感じる。
「…ぁっ」
また、こけた。
今度は派手に前から転んで、おでこをぶつけた。
「~っ……目を閉じるからっ…」
自分でやっておいて、と思わないでもないけれど。おでこを抑えて、立ち上がる。
「…ふふ、」
そして。
微笑む。
そっと、リボンが編みこまれている髪に触れる。
指輪をしている、指で。
なぞる。
「…御免なさい、…有り難う」
「 」
呟いて、目を閉じた。
全てを無かったかのように振舞える程、私は優しくない。
強くない。
其れが、ひどく辛い。
だけれど。
一緒に居てくれるなら。
一緒に、居てさえくれるのなら。
「其れで…良いから…」
嫉妬をするかもしれない。
傷つけるかもしれない。
其れでも、傍に居られるように。
ふわ、とまた舞う。
桜が。
舞いが。
舞う。
緩やかに舞い続ける。
桜と共に。
其の少女には、微笑んでいた――…。
幸せ、なのだから。