元々、寒かっただろうか。
私が生まれた島は、桜が咲くのが遅かった。
もっとも、私は島を出た事なかったから、知らなかったけれど。
―――その年は、暖冬の所為か、早く桜が咲いた。
「はう・・・・・・」
ゆっくり、手を伸ばしてみる。
風が、吹いた。
あっと言う間に、桜は散る。
散った後は、誰も見向きすらしなかった。
手のひらに、桜がはらりと落ちる。
綺麗で、消えそうなくらい淡い桜。
それを見つめる。
本当は、家事をしなくてはならなく、こういう事をしている暇は、なかったのだが。
それでも、じっと見てしまう。
あんなに、たくさん咲いて。
あんなに、綺麗に咲いて。
それなのに、堕ちたら一人で、醜くて。
でも、散る時はあんなに綺麗で。
――――♪
歌を口ずさんだ。
理由は分からないが、歌いたくなった。
――-――♪
歌っている間も、桜は散る。
ふわ。
スカートを翻して、踊る。
踊りは、得意ではなかったが。
―――――♪
あまりに、早く見れた桜に、心が躍ったのか。
でたらめな、踊りを踊る。
以前、母がそうしていた。
楽しい時、楽しげに踊っていた。
姉が、歌っていた。
戻らない日々。
いずれは、桜のように、散ってしまうかもしれない日々。
一人で、見た桜。
そう思った。
歌声は、響く。
あまりにも、淡くて儚い美しさだったから
―――――♪
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